マルウェア感染と防止策:完全ガイド

 

質問: マルウェアの感染経路と対策方法について教えてください。また、どんな種類が存在するのか知りたいです

回答: マルウェアの感染経路は主にメールやフィッシングサイトが主ですが、他にも様々な要因が考えられます。
本稿では、マルウェアについて徹底解説していきます。

近年、パソコンやスマートフォンのマルウェア感染に関する調査の依頼が急増しています。

今回、株式会社赤井事務所が令和5年度に実施したマルウェア感染調査の中で、どのルートから感染が起きたかについてのデータを集計しました。この記事では、これらの情報を特別にご紹介します。

上記の結果からわかるように、メール、ウェブサイト経由の感染が最も多いことがわかります。本稿では、マルウェアの種類や実際の被害、対策方法までを詳しく解説していきます。

マルウェアとは

マルウェア、または悪意のあるソフトウェアは、コンピューターシステムに意図的に損害を与えるために設計されたプログラムです。これは、情報を盗む、システムの正常な機能を妨害する、あるいは不正なアクセスを許可するために使用されます。マルウェアは、ユーザーが知らないうちに簡単にシステムに侵入し、広範囲にわたる損害を引き起こす可能性があります。

 

ウイルスとの違い

マルウェアとウイルスはよく混同されがちですが、重要な違いがあります。ウイルスは一種のマルウェアであり、自己複製する能力を持ち、他のプログラムやファイルに感染して拡散します。一方、マルウェアはより広範なカテゴリで、ウイルス以外にも、トロイの木馬、スパイウェア、ランサムウェアなど多様な形態を含みます。ウイルスは主に破壊を目的としていますが、他のマルウェアは盗聴、データの窃盗、システムの操作など、様々な目的で使用されます。

 

マルウェアの種類

マルウェアには多くの種類があり、それぞれ異なる特徴と目的を持っています。代表的なものをいくつか挙げます。

名称 特徴 目的
ウイルス 他のファイルに感染し、自己複製する能力を持つ。通常、感染したファイルを実行することで活動が始まる。 システムの破壊、データの損傷、コンピュータリソースの占有。単に破壊的な行動を起こすことが主な目的。
トロイの木馬 合法的なソフトウェアに見せかけてユーザーを欺く。インストール後、背後で悪意のある活動を行う。 データの盗難、システムの制御の奪取、その他の悪意のある活動。ユーザーの信頼を悪用してアクセスを得ることが目的。
スパイウェア ユーザーの活動を秘密裏に監視し、個人情報やブラウジングデータを収集する。 個人情報の窃盗、広告目的のデータ収集。ユーザーのプライバシーを侵害し、利益を得ることが主な目的。
ランサムウェア ユーザーのデータやシステムを暗号化し、解除のために身代金を要求する。 金銭的利益の獲得。ユーザーのデータやシステムを人質にとり、支払いを強要する。
アドウェア 不要な広告を表示し、時にはユーザーのブラウジング習慣を追跡する。 広告収入の獲得やマーケティングデータの収集。ユーザーに不快感を与えることなく広告を表示し、収益を上げる。

 

マルウェアによる主な被害

マルウェアによる被害は多岐にわたります。主なものは以下の通りです。

  • データの損失
  • 重要な文書、写真、その他のファイルの破壊や失われる。

  • 個人情報の盗難
  • 銀行情報、ソーシャルセキュリティナンバー、他の機密情報の漏洩。

  • システムの性能低下
  • マルウェアの活動により、コンピュータの速度が低下。

  • セキュリティ侵害
  • 企業や政府機関のセキュリティが破られ、機密情報が漏洩するリスク。

  • 身代金の要求
  • ランサムウェアによってファイルが人質に取られ、解放のために金銭を要求される。

これらの被害は、個人ユーザーだけでなく、企業や政府機関にも深刻な影響を及ぼす可能性があり、セキュリティ対策の重要性を強調しています。

マルウェアの感染経路

マルウェアの感染経路は多岐にわたり、ユーザーは日常的に使用する様々な手段を通じて感染するリスクにさらされています。主な感染経路としては、EメールやSMS、Webサイト、ファイル共有ソフト、そしてデータ記録媒体が挙げられます。

 

EメールやSMS

EメールやSMSを通じたマルウェアの感染は非常に一般的であり、攻撃者は様々な手口でユーザーを欺くことがあります。

「フィッシング」は、攻撃者が信頼できる組織や企業を装い、偽のログインページや添付ファイルを通じて個人情報を盗み出す手法です。例えば、過去には銀行やソーシャルメディアの公式からの通知と見せかけたフィッシングメールが多く報告されており、これらのメールにはユーザーのログイン情報を盗むための偽のウェブサイトへのリンクが含まれていました。

「悪意のある添付ファイル」も一般的な手口です。この場合、攻撃者は重要な文書や写真といった無害に見えるファイルを添付してメールを送りますが、実際にはマルウェアが仕込まれています。ユーザーがこれらのファイルを開くと、コンピュータやスマートフォンが感染することになります。過去には、このような手法を用いて大規模なランサムウェア攻撃が行われたことがあります。

最後に、「詐欺的なリンク」を含むSMSやEメールも問題です。ここでは、攻撃者がリンクを通じてユーザーをマルウェアに感染したサイトに誘導します。これらのリンクは一見無害に見えますが、クリックするとマルウェアがダウンロードされたり、感染したウェブサイトにアクセスさせられたりします。例えば、宝くじの当選を装ったSMSが送られてきて、リンクをクリックするとマルウェアがインストールされる事件がありました。

SMSによるフィッシング詐欺については下記で詳しく解説しております。

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Webサイト

Webサイトを通じたマルウェア感染は、ユーザーが不正なコンテンツを意図せずにダウンロードすることで発生することがよくあります。以下の二つの方法が特に一般的です。

まず、「ドライブバイダウンロード」という手法があります。これは、セキュリティが弱いWebサイトを訪問した際に、ユーザーの知らないうちに自動的にマルウェアがダウンロードされる現象です。例えば、過去には一見正規のウェブサイトに見えるが、実際には悪意のあるコードが仕込まれたサイトが存在し、これを訪れたユーザーのコンピュータにマルウェアが無許可でインストールされる事件が発生しています。

次に、「偽のソフトウェアアップデート」という手法です。これは、ユーザーに本物のソフトウェアアップデートのように見せかけて、実際にはマルウェアをインストールさせる手口です。たとえば、フラッシュプレイヤーやブラウザのアップデートを偽装してユーザーにインストールを促し、実際にはマルウェアをコンピュータに導入する事件が過去にありました。

これらの方法は、ユーザーが不審なWebサイトを訪れたり、警告を無視して未確認のソフトウェアをインストールしたりすることで、簡単に被害に遭う可能性があります。そのため、不審なウェブサイトの訪問を避け、ソフトウェアのアップデートは常に公式サイトから直接行うことが重要です。

 

ファイル共有ソフト

ファイル共有ソフトウェアの使用は便利である一方、マルウェアに関するリスクも伴います。特に、以下の二つの点に注意が必要です。

まず、「不正なファイル」の問題があります。例えば、有名なソフトウェア、音楽、映画などの人気ファイルに見せかけたマルウェアが存在します。利用者がこれらの魅力的なファイルをダウンロードしようとすると、実際にはマルウェアがコンピュータに侵入する可能性があります。過去には、人気の映画やソフトウェアの名を騙ったマルウェアが多数報告されており、これらのファイルをダウンロードした多くのユーザーが被害に遭っています。

次に、「ピアツーピアネットワーク」におけるリスクです。ピアツーピアネットワークは、ユーザー同士が直接ファイルを共有するシステムですが、セキュリティが不十分な場合が多いです。これにより、一つの感染したコンピュータからマルウェアがネットワーク内の他のユーザーに簡単に広がることがあります。過去の事例では、ピアツーピアネットワークを介して広がったマルウェアにより、個人情報が漏洩したり、大規模なネットワーク障害が発生したりする事件が発生しています。

 

データ記録媒体

USBドライブや外付けハードドライブなどのデータ記録媒体も、マルウェアの一般的な伝播手段です。以下の点に注意が必要です。

感染したデバイス: 他の感染したシステムに接続されたデバイスが、マルウェアを運ぶ媒介となる。
自動実行機能: デバイスが接続された際に自動的に実行されるマルウェア。
これらの感染経路を通じて、マルウェアは個人のコンピュータはもちろんのこと、企業や政府機関のネットワークにも侵入する可能性があります。そのため、日常的なセキュリティ対策と警戒心が不可欠です。

マルウェア感染対策

マルウェアから自身のデバイスを守るためには、複数の対策を組み合わせて実施することが重要です。ここでは、ウイルス対策ソフトの利用、OSの定期更新、IT(セキュリティ)リテラシーの向上、そして特にiPhoneにおけるマルウェア対策に焦点を当てて説明します。

 

ウイルス対策ソフト

ウイルス対策ソフトは、マルウェア感染を防ぐ最も基本的な方法の一つです。以下の点が重要となります。

リアルタイム保護: ウイルス対策ソフトは、システムをリアルタイムで監視し、マルウェアの侵入を即座に検出して対処します。
定期的なスキャン: 定期的な全体スキャンにより、既にシステムに侵入している可能性のあるマルウェアを検出し排除します。
最新のウイルス定義: ウイルス対策ソフトは最新のウイルス定義に基づいて機能するため、定期的にアップデートすることが不可欠です。

 

OSの定期更新

オペレーティングシステム(OS)の更新は、セキュリティ上の脆弱性を修正し、マルウェア感染のリスクを低減します。以下の点が重要です。

自動更新の活用: 多くのOSは自動更新機能を備えており、新しいセキュリティパッチがリリースされると自動的にダウンロードされます。
セキュリティパッチの適用: セキュリティ上の脆弱性を修正するパッチを適時適用することで、攻撃者がこれらの脆弱性を悪用するのを防ぎます。

 

IT(セキュリティ)リテラシーの向上

ITセキュリティリテラシーの向上は、個人レベルでのマルウェア対策において非常に重要です。以下の点に注意が必要です。

フィッシングメールの識別: 不審なEメールやリンクに対する警戒心を持つことが重要です。
安全なパスワードの使用: 強固なパスワードの使用と定期的な変更が重要です。
公共のWi-Fiの使用における注意: 公共のWi-Fiを使用する際は、セキュリティリスクを理解し、適切な対策を取ることが求められます。

 

iPhoneのマルウェア対策

iPhoneはその設計上、マルウェアに対して比較的安全とされていますが、油断は禁物です。以下の対策が推奨されます。

App Storeからのみアプリをダウンロード: Appleの厳格な審査プロセスを経たアプリのみを使用します。
ジェイルブレイクを避ける: ジェイルブレイクはセキュリティ機能を無効化し、マルウェア感染のリスクを高めます。
iOSのアップデートを定期的に行う: 新しいセキュリティ機能やバグ修正が含まれるため、iOSのアップデートは重要です。
これらの対策を組み合わせることで、マルウェア感染のリスクを大幅に低減できます。常に警戒心を持ち、セキュリティ対策を怠らないことが重要です。

マルウェア感染した際の兆候

マルウェアに感染した際に現れる兆候は、デバイスの挙動において様々な異常が発生することで気付くことができます。特に、パフォーマンスの低下、突然のシャットダウン、そして行っていない操作の形跡が見られる場合、マルウェアの感染を疑うべきです。

 

パフォーマンスが低下する

マルウェアに感染しているデバイスは、通常のパフォーマンスよりも著しく低下する傾向にあります。具体的には以下のような症状が現れます。

処理速度の遅延: アプリケーションの起動が遅い、または反応が鈍い。
システムのフリーズ: コンピュータが頻繁に応答しなくなる。
異常なCPUやメモリの使用: バックグラウンドでマルウェアが動作している可能性があります。

 

デバイスが突然シャットダウンする

マルウェア感染の兆候として、デバイスが予期せず突然シャットダウンすることがあります。以下のような状況が考えられます。

突然の再起動: マルウェアによるシステムの不安定化が原因で、デバイスが突然再起動する。
予期せぬシャットダウン: システムがオーバーロードされるなどして、デバイスが自己保護のためにシャットダウンする。

 

行っていない操作の形跡がある

マルウェア感染の最も明白な兆候の一つは、ユーザーが行っていない操作の形跡があることです。これには以下のような状況が含まれます。

不審なアプリケーションのインストール: ユーザーの知らない間に新しいソフトウェアがインストールされている。
ブラウザのホームページ変更: ユーザーの設定とは異なるホームページに変更されている。
未承認のアクセス: オンラインアカウントやEメールが不正にアクセスされている形跡がある。
これらの兆候を見つけた場合、速やかにセキュリティ対策を講じ、専門家の助けを求めることが重要です。マルウェア感染は個人のプライバシーとセキュリティに深刻な影響を与えるため、早期発見と対処が不可欠です。

マルウェアに感染した時の対処法

マルウェアに感染した際の対処法は、感染の拡大を防ぎ、被害を最小限に抑えるために重要です。以下に、具体的な対処方法を詳述します。

 

ネットワークからの遮断

最初のステップとして、感染が疑われるデバイスは直ちにネットワークから切断することが重要です。これにより、マルウェアが他のデバイスやネットワークへと拡散するのを防ぎ、また外部のコントローラーとの通信を遮断します。ワイヤレス接続を切断し、必要であればネットワークケーブルを物理的に抜くことも考慮してください。

 

サービスの停止

次に、感染したと思われるデバイス上で動作しているサービスを停止します。特にインターネットに接続するアプリケーションやバックグラウンドで動作しているプロセスは、マルウェアによって利用される可能性があります。このステップは、マルウェアの活動を一時的に抑制し、システムへの更なる損害を防ぎます。

 

感染経路の特定

マルウェアの感染経路を特定することは、今後の防御策を強化するために不可欠です。感染が疑われる前後の活動を振り返り、不審なメールの添付ファイル、怪しいウェブサイトの訪問、ダウンロードしたファイルなどを確認します。この情報は、感染の原因を理解し、同様の事態を防ぐために役立ちます。

 

セキュリティソフトで駆除

信頼できるセキュリティソフトウェアを使用してマルウェアを駆除することは、感染したデバイスの回復において重要な役割を果たします。セキュリティソフトウェアは最新の状態に更新し、フルスキャンを実行して検出されたマルウェアを安全に除去します。このプロセスは時間がかかることがありますが、徹底的に行うことが重要です。

 

PCの初期化

深刻なマルウェア感染の場合、またはセキュリティソフトウェアによる駆除が不可能な場合、PCの初期化が最後の手段となります。これにより、システムを工場出荷時の状態に戻すことができ、マルウェアを完全に取り除くことができます。ただし、このプロセスは全てのデータと設定を消去するため、重要なデータは事前にバックアップすることが不可欠です。

これらの対処法を実施する際には、慎重に進めることが重要です。特に、セキュリティの専門家からのアドバイスを求めることも、適切な対応を取る上で有効な手段です。また、マルウェア感染のリスクを最小限に抑えるためには、日頃からの予防措置が不可欠です。

マルウェアの被害事例

ロイヤルメールのランサムウェア攻撃
2023年初頭、ロイヤルメール(イギリスの郵便事業体)の郵便配達部門がLockBitグループによるランサムウェア攻撃の対象となりました。このサイバー攻撃により、組織の業務が大きく妨害され、復旧に1ヶ月以上を要しました。ランサムウェア攻撃では、ハッカーが被害者のデータを暗号化し、解読キーのための身代金を要求します。この事件では、ロイヤルメールのサービスが中断されただけでなく、重要な公共サービスがサイバー脅威に対してどれほど脆弱であるかが浮き彫りになりました​​。

オンタリオ州出生登録簿のデータ侵害
もう一つの重大な事件は、MOVEitファイル転送ツールの脆弱性を利用したオンタリオ州出生登録簿のデータ侵害でした。この侵害により、過去10年間に妊娠ケアを受けた約340万人の機密情報が流出しました。さらに、この期間中に生まれた200万人以上の乳幼児の医療データが漏洩しました。この事件は、広く使用されているソフトウェアの脆弱性が個人および機密データの大規模な漏洩につながるリスクを示しています​​。

これらの事例から、サイバー脅威の進化する性質と強固なサイバーセキュリティ対策の重要性が明らかになります。ロイヤルメールの攻撃は、特に重要なインフラストラクチャーや公共サービスに対するランサムウェアの破壊的な可能性を示しています。一方、オンタリオ州出生登録簿の侵害は、ソフトウェアの脆弱性に関連するリスクと、データの露出がもたらす広範囲な影響を強調しています。

マルウェアを理解し、パソコンを脅威から守ろう

現代のデジタル社会において、マルウェアは避けられない脅威です。しかし、その性質を理解し、適切な対策を講じることで、パソコンを守ることが可能です。マルウェアはウイルス、トロイの木馬、スパイウェア、ランサムウェアなど様々な形態で存在し、これらはパフォーマンスの低下、データ損失、プライバシーの侵害など多岐にわたる被害を引き起こす可能性があります。

対策としては、ウイルス対策ソフトの使用、オペレーティングシステムの定期的な更新、そしてセキュリティに関する知識の向上が重要です。特に、不審なメールやリンクに注意し、信頼できるソースからのみソフトウェアをダウンロードすることが肝心です。また、マルウェア感染の兆候に早期に気付き、迅速に対処することが重要です。

万が一感染した場合には、ネットワークからの遮断、サービスの停止、感染経路の特定、セキュリティソフトでの駆除、場合によってはPCの初期化といったステップを踏むことが推奨されます。これらの行動は、被害の拡大を防ぎ、セキュリティの回復を助けます。

最終的に、マルウェアの脅威からパソコンを守るためには、常に警戒し、最新のセキュリティ情報に精通しておくことが不可欠です。これにより、個人や組織はデジタル環境での安全性を確保し、マルウェアによる潜在的なリスクを最小限に抑えることができるのです。

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