業務上横領とは?定義・罰則・調査方法まで徹底解説!

業務上横領とはなんですか?意味や罰則について教えてください

業務上横領とは、従業員や役員などが、自らの職務上の地位を利用して、会社や組織の資産を不正に取得する行為を指します。

業務上横領とは、職場における信頼関係や権限の地位を悪用し、会社や組織の資金や資産を不正に横領する行為を指します。これは通常の横領と異なり、特に職務上の立場や権限を利用する点が重要な特徴です。
この行為は法律により禁止されており、発覚した場合、刑事訴訟による罰金や懲役刑の可能性があり、また職場での解雇や信用失墜などの重大な職業的な結果を招くことがあります。


2024年度 横領に関するアンケート調査

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Q.業務上横領の原因として最も大きいと思われるものは?

アンケートの結果、経済的困難が業務上横領に走る理由として最も多く挙げられました。また、倫理観の低下も横領の理由として多くの人々から指摘されています。

業務上横領罪とは

業務上横領罪は、職務を遂行する中で、職務上の地位を悪用して他人の財物を不正に利用または盗用する行為を指します。この犯罪は、通常の横領罪と比べて、加害者が特定の職務や職業上の地位にあることが重要な特徴です。例えば、銀行員が顧客の預金を勝手に引き出す、会社の経理担当者が会社の資金を私的に流用するといった行為が該当します。

業務上横領罪の定義

業務上横領罪は、法律上、「業務上の地位を利用して他人の財物を不正に取得、使用、または他人に渡す行為」と定義されます。この罪を構成するためには、犯人が業務上の地位にあること、そしてその地位を利用して横領行為を行うことが必要です。横領される財物は、金銭、物品、データなど、具体的な価値を有するものに限られます。

構成要件

業務上横領罪の構成要件には主に次の三点が含まれます。

  1. 加害者は業務上の地位にあることが要求されます。これは、加害者が特定の職業や職務に就いている状況を指し、その地位から得られる権限や信頼を悪用することを含みます。

  2. 加害者は他人の財物を不正に取得、使用、または他人に渡す行為を行う必要があります。この点では、単なる誤用や不注意ではなく、意図的な不正行為が求められます。

  3. 加害者の行為は業務上の地位を利用したものでなければなりません。これは、その地位を利用して行われた横領が通常の横領罪と区別される重要な要因です。

以上の定義と構成要件を満たす行為が業務上横領罪として扱われ、法律に基づく厳格な罰則の対象となります。

業務上横領罪の刑罰

業務上横領罪の刑罰

業務上横領罪の刑罰は、日本の刑法において重く定められています。具体的には、この罪を犯した者は、通常10年以下の懲役に処されることが多いです。ただし、横領された財物の価値、犯行の方法、被害者への影響、犯行の動機や背景などの状況によって、刑罰の程度は異なる場合があります。また、業務上横領罪は職務上の信頼関係を裏切る行為であるため、社会的な信用失墜や職業的な制裁(解雇など)を伴うことも一般的です。

業務上横領罪と単純横領罪・窃盗罪の違い

業務上横領罪は、単純横領罪や窃盗罪とは異なる点がいくつかあります。


単純横領罪

単純横領罪は、他人の財物を横領する行為を指しますが、業務上横領罪のように、職務上の地位を利用する必要はありません。単純横領罪の刑罰は一般に5年以下の懲役または罰金とされ、業務上横領罪よりも軽い傾向にあります。


窃盗罪

窃盗罪は他人の財物を秘密裏に盗む行為を指し、こちらも10年以下の懲役に処せられることが一般的です。業務上横領罪と窃盗罪の主な違いは、窃盗罪が「秘密裏に」財物を盗むことを要求する点にあります。業務上横領罪では、職務上の地位を利用した行為が重視され、必ずしも秘密裏に行われる必要はありません。

 

これらの違いは、犯行の性質と法的な位置付けにおいて重要です。各犯罪の特性に応じて、適切な法的措置が講じられます。

業務上横領防止策

業務上横領防止策は、組織内での不正行為を防ぐために重要です。以下の手法は、横領のリスクを減少させる効果的な手段として広く採用されています。

現金引出制限システムの導入

現金引出制限システムの導入は、業務上横領を防ぐための有効な手段です。このシステムでは、特定の金額以上の現金を引き出す際には、複数の承認が必要となります。例えば、一定額以上の引き出しには、上司の承認や複数部署の確認が必要となることがあります。これにより、単独での大量の現金引き出しを防ぎ、横領のリスクを軽減します。

定期的な出金記録のチェック

定期的な出金記録のチェックも、業務上横領を防止する重要な手段です。
このプロセスでは、経理部門や内部監査部門が、定期的に出金記録を確認し、不審な取引がないかを監視します。このチェックにより、不正な出金や不適切な資金の流用を早期に発見することが可能になります。

金銭管理の多重チェックシステム

金銭管理の多重チェックシステムは、業務上横領を防ぐために効果的な手法です。このシステムでは、金銭の取り扱いに関するすべてのプロセスにおいて、複数の人員が関与し、相互にチェックを行います。例えば、経理処理においては、一人が記録を行い、別の人がこれを検証するなど、業務の分離と監督が徹底されます。このようにして、不正行為を防ぎ、透明性を確保します。


以上の方法は、業務上横領罪を防ぐために、組織が実施できる具体的な措置です。これらの措置は、法律に基づく厳格な罰則の対象となる業務上横領罪の発生を減少させる効果があります。

業務上横領が発生した場合の対応策

業務上横領が発生した場合、その対応策として以下の手順が考えられます。

業務上横領の証拠を十分に揃える

横領が疑われる場合、まずは確実な証拠を集めることが重要です。これには、不正に関連する財務記録、取引明細、電子メールのやり取り、内部の通信記録などが含まれます。証拠収集は、法的手続きにおいても重要な役割を果たします。そのため、関連するすべての文書やデジタルデータを確保し、それらが改ざんされないように保管することが求められます。

デジタルフォレンジック調査を依頼する

デジタルデータは横領事件の解明において重要な役割を果たすことがあります。そのため、デジタルフォレンジックの専門家に調査を依頼することが有効です。
これらの専門家は、コンピュータシステム、サーバー、モバイルデバイスなどからデータを回収し、デジタル領域における不正行為の証拠を見つけ出すことができます。また、データの改ざんや削除の有無も調査することができ、法的証拠としての信頼性を高めることが可能です。


横領が発覚し第三者委員会が設置された際には、通常デジタルフォレンジックの専門家が調査を行います。これは、メールやファイル交換の記録が改ざんされていないことを証明する必要があるためです。もし横領が明るみに出た後にパソコンが不適切に扱われ、証拠改竄の疑いが生じた場合、横領の証明が困難になる恐れがあります。そのため、疑念が持たれる段階で、パソコンなどはすぐにデジタルフォレンジックの専門業者に依頼することが最善です。

横領者に対して返還を請求する

横領が明らかになった場合、企業は横領者に対して不正に得た資産の返還を請求することができます。これは、盗まれた資金や物資の回復を目指すだけでなく、将来的な不正行為を抑止する効果も期待できます。返還請求は、法的措置を伴う場合もあるため、企業は弁護士と協力して行動を進めることが望ましいです。

横領者の懲戒処分・刑事告訴などを検討する

横領が確認された場合、企業は横領者に対して懲戒処分を下すことができます。これには解雇や降格などが含まれることがあります。さらに、事案の重大性に応じて、刑事告訴を検討することも重要です。刑事告訴は、不正行為に対する法的な罰をもたらし、企業の倫理規範を守る姿勢を明確に示すことができます。ただし、このような措置を講じる際は、法的な手続きや証拠の充分性を慎重に考慮する必要があります。

業務上横領の事例紹介

香川県信組元支店長による横領

この事件では、香川県の信用組合の元支店長が、友人名義の口座を利用してローンを不正に利用しました。この行為は横領にあたり、彼はその後懲戒解雇されました。信用組合の管理下にある資金を不正に利用する行為は、業務上横領罪に該当し、法的な責任が重大です。このケースは、金融機関の信頼性に関わる重要な問題を浮き彫りにしました。

対馬市職員による6000万円の横領

対馬市の職員が観光協会の口座から6000万円を着服した事件です。この行為により、職員は刑事告発され、懲戒処分を受けました。公務員による大規模な横領事件として、地方自治体の資金管理の問題点を示し、公共部門の信頼性に深刻な影響を及ぼしました。

グローリー子会社社員による21億円の横領

グローリーの子会社で働く社員が21億円を横領した事件です。この社員は、企業内部の資金を不正に利用し、巨額の横領を行ったため、懲戒解雇されました。この事件は、企業の内部管理体制の脆弱性を浮き彫りにし、企業ガバナンスの重要性を強調しました。

山口・宇部市の元職員による生活保護費の横領

山口県宇部市の元職員が返還された生活保護費を横領した事件です。この元職員は8件の着服を認め、逮捕されました。生活保護費は社会福祉のための重要な資金であり、その横領は社会的にも大きな問題となります。この事件は、公共資金の適正な管理と、公務員の倫理観の重要性を示しています​

業務上横領の時効

業務上横領に関連する法的な問題を解決する際、時効の概念を理解することが重要です。時効は、ある期間が経過することで、犯罪の起訴や損害賠償の請求ができなくなる法的な制度です。この時効は、刑事上と民事上で異なる規定があります。

刑事上の公訴時効

刑事上の公訴時効は、犯罪が発生してから一定期間が経過した後、その犯罪に対して刑事訴訟を起こすことができなくなる制度です。業務上横領の場合、その時効期間は犯罪の重さによって異なります。例えば、横領された金額が大きい重大なケースでは、時効期間も長く設定されることが一般的です。この時効期間内に警察や検察が起訴を行わなければ、犯人は刑事責任を問われることはありません。

民事上の損害賠償請求権の消滅時効

民事上の損害賠償請求権の消滅時効は、被害者が横領によって被った損害に対して賠償を求める権利が、一定期間の経過とともに消滅するという制度です。この時効期間は国や地域によって異なり、一般的には数年から数十年の範囲で設定されています。この期間が過ぎると、被害者は横領犯に対して損害賠償を請求する法的な権利を失います。したがって、被害者はこの時効期間内に適切な法的措置を取る必要があります。

まとめ

本稿では、業務上の横領に関連する複数の重要な側面について詳細に検討しました。
まず、横領が疑われる場合の対応策として、下記が挙げられました。

  • 確実な証拠の収集
  • デジタルフォレンジック調査の実施
  • 横領者への返還請求
  • 懲戒処分や刑事告訴の検討

これらのステップは、企業が直面する横領の問題に効果的に対処するために不可欠です。

次に、業務上横領を未然に防ぐための方法として、内部統制の強化、定期的な監査とレビュー、従業員教育と意識向上、透明性の確保などが重要であることを説明しました。これらの取り組みは、不正行為を抑止し、企業の健全な運営を支援するために必要です。 最後に、業務上横領の法的側面、特に刑事上の公訴時効と民事上の損害賠償請求権の消滅時効について考察しました。これらの概念は、横領事件に対する法的な対応を理解する上で重要です。 このように、業務上の横領は多面的な問題であり、それに対処するには総合的なアプローチが求められます。適切な予防策の実施、迅速かつ効果的な対応、そして法的な側面の理解が重要となります。これらの要素を組み合わせることで、企業は横領のリスクを最小限に抑え、その影響を効果的に管理することが可能となります。